第一章 出会い
翌日、眼を覚ました時には既に九時を回っていた。俺は宿屋で朝食の目玉焼きの乗ったトーストを手早く食べ終えると武器屋アームズに向けて出発した。
外は曇り空のためか少し薄暗い。俺は雨が降らない事を祈りつつアームズを目指して歩き始めた。
城下町の通りは昨夜とは違い、沢山の人で賑わっていた。路肩には果物やアクセサリーを売る露天商が所狭しと並んでいる。
昨日魔族討伐組合で教えられた通りに城下町の西に向かって進む。俺が泊まっているゴージャスは城下町の東に位置するため、正反対へと歩かなくてはいけない。
これだけ大きな城下町だと通りを走る馬車もあるのだが、辺りの風景を観察するのが好きな俺はノンビリと歩いて進んでいるところだ。
中央に巨大なアラーム城のあるこの城下町は端から端まで歩くと二時間位かかるだろうか。ゴージャスから武器屋アームズまでなら一時間ちょっとで到着するはずだ。
四季にほとんど違いが無く一年中暑いゴールドウィッシュ大陸だが、今日のような天気なら散歩には丁度良い。辺りの店や道路脇の花壇を見ながら歩いているとアラーム城下町西地区の案内図が見えてきた。
「あっちかな……」
暫く進むと武器屋アームズが見えてきた。四角い二階建ての建物で、灰色の頑丈そうな石で出来ている。
木製の扉の上には事務的な文字で武器屋アームズと記されていた。
その扉を左手で押し開け店に入ると、冒険者らしき人が数人いるのが眼についた。
「いらっしゃい」
突然俺の右側から声が聞こえてきた。右にあるカウンターの向こう側に座った身長一メートル位の老人の姿が目に入る。
「ホビット族か……。ここの主人のマクルスっていうのはあんたかい?」
「すると、お主が魔族討伐組合に紹介されてきたブレイブかい」
目の前のずんぐりとしたホビット族のマクルスは俺の姿を上から下へ舐めるように眺めた後で言った。
「一見若くて格好もスーツ姿で頼りないが、常に気を張り詰めている辺りはそれなりにレベルの高い冒険者らしいな」
「職業は盗賊でレベルは三十だ」
俺はマクルスの偉そうな態度に不快感を抱いたが、金のために我慢する事にする。マクルスは顔半分を埋める程の豪快なヒゲを撫でながら俺の姿を眺め続けた。
「ほほぅ、それにそのスーツは普通のスーツではないな。鉄の糸が編み込まれているようだ」
どうやらマクルスは武器屋としての腕は高いようだ。しかし、残念ながら俺のスーツに編み込まれているのは、鉄の糸ではなく更に丈夫な鋼の糸だ。
「むぉっ! そ、その二つの銃はなんだ?」
「おい! オヤジ! ファッションチェックなんてしなくていいんだ。依頼の内容を教えてくれ」
俺は話題を変えた。この銃について詳しく教えてやる事は出来ない。なぜなら俺も詳しい事は知らないからだ。
この銃が俺の実家の納屋に眠っているのを発見した時は胸が躍った。
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