小説家になろう
盗賊ブレイブ@勇者パーティー御一行様〜出会い〜
第四章 転機

 森を降り始めたのは、それから一時間程経ってからの事だった。燃え広がってしまった炎を秋留が魔法で消火していたからだ。秋留の魔力もほとんど底をついていたようで、だいぶ息が荒くなっていた。
 辺りは徐々に明るくなって来ている。
 後手に回る訳にはいかない、という秋留の言葉で俺達は急ぎ足で山を降りていた。アラーム城からは真っ赤に燃えるホープキング山が見えていたはずだ。それを見たガルが何を企むのか分からない。
 しかし。
 麓の町まで戻るまでに時間がかかり過ぎる。俺たちが乗ってきた馬車はロフティ達が乗っていっただろうし。
 俺達は各々に考えながら駆け足で山を降りると反対側から馬車がやってくるのが見えた。俺は両手を広げて馬車を止めると、御者に向かって言った。
「急いでいるんだ! 馬車でアラーム城下町まで行ってくれないか?」
 目の前の目深に帽子を被った御者が荷台に向かって叫んだ。
「だんなぁ、怪しい三人組が城下町まで運んでくれってよぉ!」
 暫くの沈黙。どうやら馬車の主は荷台で寝ていたようだ。やがて、モゾモゾと人が動く音が聞こえた。
「う、う〜ん? なんだ?」
 荷台から響く低い声。どこかで聞いた事のある生理的に受けつけない気持ち悪い声。その声の主が荷台から飛び降りた時に、大地が揺れたような感覚がした。
「タコールかよ……」
 俺は露骨に嫌な顔をしながら、目の前の赤い奴に向かって言った。
「て、てめぇはブレイブ!」
 タコールは右手に斧を構え、左手で俺を指差しながら叫んだ。口からは唾の飛沫が飛んでくる。
「何? ブレイブ、知り合い?」
 少し遅れて走ってきた秋留が言った。すぐ横で話掛けられて、少しドキッとしてしまう。
「ま、まあな……」
 俺は曖昧に返事をして目の前のタコールを見た。タコールは秋留の事を見つめたまま赤い顔を更に赤くして硬直している。
 ははぁ〜ん、さては、こいつ。
「こいつ知り合いなんだけどさ、秋留からも馬車を貸してくれるようにお願いしてくれよ?」


 タコールは中々良い馬車を借りていたようで、アラーム城は既に目の前に見えている。
 秋留からの申し入れにタコールはあっさりと馬車を貸してくれた。
 城に向かう途中に御者から聞いた話によると、タコールは傷ついた仲間の治療費を払うために、金鉱を探そうとしていたらしい。何でも、右足に受けた傷が特に酷いらしく腕の良い魔法医を雇うのに金がいるらしい……。
 仕事が一通り片づいたらパッシの所に行って、金を少し置いてこよう。
 それにしてもザムの姿が無かったが……。あまり考えられないが別行動で金の工面でもしているのだろうか。
「ここで降ろしてください」
 広い城下町の大通りを走り終わって、城の桟橋の前で御者に向かって秋留が言った。俺達は装備を整えると荷台から降りた。

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