第五章 紅い旋風
マクルスから依頼料を貰ってから、三日が経過した。今日も俺はこの広いアラーム城下町をブラブラとしている。昨日、魔族討伐組合に行って適当な依頼を探したが、どれもこれも報奨金の額も内容もパッとしないものばかりだった。
まぁ、たまにはこういうゆったりとした気分で町を歩くのも悪くは無い。
運が良ければ秋留に出会えるかもしれない。まだこの城下町にいるだろうか。こんな事なら城にいる時に連絡先の一つや二つ聞いておくんだったと、思わなくもないが。
出会いたくない青い髪のあいつには何度か出くわした事があるが、その度に俺は高度な気配消しを使ってやり過ごしている。
「ぎゃあああああ」
男の悲鳴が聞こえてきたのは、俺が大通りで魚肉バーガーを注文している最中だった。両手にネカーとネマーを構えながら、俺は悲鳴の聞こえてきた方に走り始めた。
普段なら金にならない事には首をつっこまないと決めている俺だが、最近暇で退屈していた。その退屈しのぎには丁度良さそうだし、上手く行けば礼金などをもらえるかもしれない。
「また悲鳴が聞こえたぞ!」
青色の制服を着た複数の男達が慌しく走り回っている。あの制服は治安維持協会のものだ。
また……?
この城下町で何かが起ころうとしているのだろうか?
「!」
風を切り裂く乾いた音が聞こえ俺は素早く身を屈めた。隣を反対方面へと逃げていた一般市民の背中に鮮血が走る。
「うわぁ!」
俺と同じ方向へ向かっていた治安維持協会員達もあっけなく吹き飛んでいった。
「ちっ」
俺は舌打ちすると立ち止まり辺りの気配を伺った。
後ろか!
俺は咄嗟に前転する。俺の頭上を何かが通り抜けていったのが分かった。
「ほう! 我の攻撃を二度も避けたか!」
俺はネカーとネマーを構え、声のしてきた頭上を見上げる。
空から優雅に舞い降りたのは、一匹の黄金の毛並みをした鳥の獣人だった。右手には黄金色のレイピアを握っている。
「お前、獣人か? 獣人っていうのはそんなに野蛮なのか?」
俺は獣人というものにほとんど面識がない。
今まで冒険して来た大陸でもあまり見かけなかったからだ。
「獣人? 我をそんな下等な生き物と一緒にするな。俺は知恵ある高貴なモンスター様だ!」
傲慢なモンスターは無視して俺は辺りを見渡した。普段着の男や買い物帰りの女性。騒ぎを聞きつけた冒険者や兵士の姿。その全員の身体が真っ赤に染まり、石畳の地面に転がっていた。
舌打ちを一つして、素早い動きでネカーとネマーのトリガを引いた。的確に頭と心臓を狙ったのだが、鳥人は左手に装備していた黄金の盾で頭への硬貨を防いだ。心臓を狙った硬貨は、鳥人が胸に装備していた金色のチェストアーマーに弾かれる。
しかしその衝撃は伝わったらしく、くぐもった叫び声と共に鳥人は体勢を崩した。
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