プロローグ
知る人ぞ知る小国モノリス。特に名産もなく、観光場所と呼ぶにも殺風景なこの国に、一人の男が大きな鞄を抱えやって来ていた。
モノリスの城下町は城下と言うにはあまりにも城から遠い場所にあり、ひっそりと人々が生活している。
国と言っても、一応城があり民が居るだけであまりにも小さい。地図にも一応載ってはいるが、すぐに場所を差せる人は殆どいないだろう。イクシム大陸の東の端にある、小さな島にその国はあった。
島には城と城下町の他に、これまた小さな町が一つあるだけで、他は自然に囲まれた後進的な島だ。
他の国との交流は殆どなく、自然の恩恵と家畜だけで国の需要は賄われている。暮らす人々は穏やかで、奔放な性格をしている者が多い。
男は重い鞄を下ろし、高台から城下町を見下ろした。動く小さい棒切れのような何かが見えるが、あれはきっと城下町に住む人々だろう。
男は目を細め、より一層注意して城下町を眺めた。
民は急ぐわけでもなく、各々の仕事を黙々とこなしているようだ。ぽつぽつと建った家は人口の少なさを窺わせた。
遠くに城が見えるが、遠近感を考慮しても随分小さく、やはり小国なのだと言うことを男は再確認する。
男は鞄を抱えなおし、城下町に向かって下り始めた。
「私の店をここに建てよう!」
「ブームさん、ブームさん。木刀が欲しいのですが」
目の前に居るのは、既に常連となったトリム。ガイア教の司祭だ。
ブームとトリムの目の高さには変わりはないが、ブームは人間のサイズに合わせた店のカウンターに、脚立のようなはしご付きのイスを置いてそこに座っている。
人間の子供の身長くらいで、おっさんの顔つきをしたブームはホビット族だ。
「あぁ、いいですよ。好きなのを選んで行ってください」
そう言うとトリムはいつも真剣に武器を選ぶ。この店には、大概同じ種類の武器が数個置いてあるので、来る客にはその中から一番良さそうな武器を選んで貰っていた。
たまに「どれがいいですかね?」とか聞いてくる客もいるが、粗悪品を扱っていないブームの店ではどれも大して変わらない。
「これが良さそうですね」
トリムも適当な物を選んだようだ。どれを選んでも大して変わりはないが、持ったり握ったりした時の感じは微妙に違う。ブームは客にはそのフィット感を選ばせているのだ。
「おいくらでしたっけ?」
「十カリムだよ」
言って客を眺める。一目でガイア教のものと分かる服に身を包んだトリムは、懐から皮のサイフを取り出し、十カリム紙幣をカウンターに置いた。
「この町には武器屋がなかったから、ブームさんのおかげで助かりますよ」
人懐っこい性格が顔に表れている。この客は大抵長話をして帰って行くのだ。
「隣町にはあるって話ですよね」
「そうそう! 僕はいつもそこまで買いに行ってたんですけど、世の中物騒ですから」
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