小説家になろう
Degrade
第四章 人質

 ぷはぁ!
 少女は息苦しくなって目を覚ました。一瞬自分がどこにいるのか分からず、回りを見渡す。
(ここドコ?)
 思わず出した声は、しゃがれてゴボゴボと言う音しか出ない。身体がだるく、口を動かすのも億劫だ。
 丸太を組んで作った家だろうか? 壁の隙間から、外の景色が透けて見える。壁際には棚があり、何が入っているのかわからない小瓶やら、皿やら、小物がきちんと整頓されていた。
 それに比べ床には木材が雑然と置かれている。
 少女は硬いベットに仰向けで寝ていた。自分がどうしてこんな所にいるのか分からなかった。誰かとどこかを歩いていたような気がする……。
 思い出せないことがとてつもない不安となって少女を襲った。何か、大事な事を忘れている! 少女の心の中でその事が一番膨れ上がった。
 身を起こそうとしても、何故か身体が動かない。少女は、唯一動く目だけをいろんな所に走らせた。
 少女の見える範囲には、扉が一つ。あとは窓らしき物もない。どちらかと言えば殺風景な部屋は隙間から入ってくる風のため、とても寒く少女は小さくブルルと震えた。
 ふと、自分の身体がどうなっているのかが気になり、少女は目一杯下の方を見た。仰向けに寝かされた身体は、特に損傷などはないようだ。自分でも痛みを感じないからそれだけは分かった。
 どうして身体が動かないのだろう? 少女は必死に手足を動かした。指先が引きつるように少し動く。少女は手足がどうなっているのかが知りたかった。しかし、どんなに頑張って下を見ても手首や足首を見ることは出来ない。
 視力自体も弱くなっている様だった。思えば耳もあまり聞こえないような気がする。
 少女は疲れて目をつぶった。
 見覚えのない場所。動かない身体。失った記憶。少女はどんどん混乱してきた。
 棚とか小瓶とかの、物の名前は分かる。ご飯の食べ方、挨拶の仕方。そういうのも分かる。過去はどうだ? 親は? 住んでる場所は? 自分は?
(わたしは、ダレ……?)
「アアアアアアア……」
 少女の不安はピークに達した。悲鳴をあげたつもりの声も、しゃがれて何かの鳴き声みたいになる。
 少女は強く目を閉じた。その真っ暗な闇だけが少女にとっての癒しとなった。

 しばらくして、少女は目を覚ました。どうやら気づかないうちに寝ていたらしい。寝ぼけたまま目を擦る。そしてゆっくりと伸びをした。
 縮んでいた節々の筋が伸ばされて、程よく気持ちよい。
(あ、動く!)
 少女は身体を動かせる事にようやく気づいた。腕を伸ばしたり、足を曲げたりしたが、手も足もどうもなっていないようだ。
 声はどうだろう?
「アー、アァー……」
 一応出ることは出るが、相変わらず酷くしゃがれていて自分でも聞き取れないほどだ。少女は少しがっかりした。
 ならば記憶は? と、自分の名前を思い出そうとしたが、無駄な努力に終わった。

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