第一章 狂った鍛冶屋
エアリードの町に滞在し始めてから一週間が経過した。
俺達パーティの一員になったばかりのジェットもしっかりと仕事をこなしている。
今は町にある雑貨屋に、秋留と一緒に非常食などの食料を調達しに行っていた。
パーティのリーダーであるカリューも、武器屋や防具屋を巡って必要な装備を揃えている最中だろう。
俺は一人、滞在中に世話になっている宿屋のベッドの上で横になっていた。
本来、冒険に出発しようとしている時の俺の役割は、魔族討伐組合に冒険の登録をしに行く事なのだが、今回は必要なかった。
昨日魔族討伐組合から直接依頼を受けたからだ。
大炎山に住む魔族お抱えの鍛冶屋サイバーを倒し、魔族の戦力を削ぐ事が今回の冒険の目的だ。
チェンバー大陸の西の方に位置する大炎山は上質な鉱物が採れる鉱山で、数多くの鍛冶屋が存在する。サイバーも豊富な鉱物を利用している一人なのだろう。
ペチンッ!
俺は突然、何者かに額を叩かれて眼を開けた。
目の前に秋留の手がある。
「皆がそれぞれ冒険の準備をしている時に一人のん気に昼寝?」
どうやら目を瞑って考え事をしている姿が、寝ているように見えたらしい。
目の前では秋留が口を膨らませて怒っている。
「今回の冒険について色々作戦を練ってたんだよぉ」
「へ〜、どんな作戦か聞かせて欲しいよね? ジェット?」
俺は黙ってしまった。
秋留の後ろでジェットが哀れみの眼で俺を見ていた。まるで「口では勝てないですぞ、ブレイブ殿」と言っているようだ。
それにしても、盗賊の俺に気付かれる事なく近づく秋留は何者なのだろう。実は魔法を使って近づいてきてるんじゃないだろうか。
「ちゃんと仕事はしたぞ。魔族討伐組合へ行ってインスペクターを借りてきた」
俺はそう言うと、キャビネットの上に乗っているカメラに羽が生えたような妖精のインスペクターを指差した。
インスペクターは、魔族討伐組合で冒険を登録すると必ず受け取る事になる妖精で、元は静かな森で生活していた妖精を人間が捕獲し、都合の良いように変種させたものだ。
そのカメラのような眼を通して、別のカメラへ映像を出力する事が出来る。
魔族討伐組合で手渡しているインスペクターの映像の出力先は、全て魔族討伐組合本部のモニターへと繋がっており、常にミッション内容を監視している。
万が一、冒険に失敗して全滅してしまった場合でも、インスペクターを通して敵の親玉などの映像を入手する事が出来る優れものである。
インスペクターを連れた冒険で一番気をつけなければならないのは、モンスターの攻撃などでインスペクターが死んでしまうことだ。
その時は、仮に親玉を倒した場合でも証拠になる映像が本部へ届かなくなってしまうため、報奨金を貰う事は出来ない。
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