第一章 暖かい街道
「誰だよ、雨男は……」
俺はカリューの顔を見ながら呟いた。一方、カリューは余りの蒸し暑さのためか、反論する気力も無い様だ。
「さすがに少し蒸し暑いですな」
ジェットはシルバークロスの装備を少し緩めにして蒸し暑さを耐えている。
そもそも死人に体温があるのだろうか。ジェットや銀星の事を見ていると、ゾンビという存在がますます分からなくなる。
その銀星は、ジェーン・アンダーソン村で買ったメス馬と、俺達の乗っている馬車を仲良く引っ張っている。危ないから前を見て馬車を引いてくれ……。
俺達がメスの馬と一緒に購入した馬車には簡易的な幌がついているが、今みたいな土砂降りの雨にはほとんど役に立たない。
俺やカリュー、ジェットは、フードつきのマントを被って雨粒を防いでいた。
秋留はと言うと、同じくマントを羽織っているが、マントが傘の様に形を変えて雨粒からご主人様を守っている。
「今日はあんまり無理しないうちに野宿した方が良さそうだね。アレキサンドラにも無理をさせたくないし」
アレキサンドラとは、銀星の隣で馬車を引っ張っているメスの馬の事だ。買ったその場で秋留が名前を決め、アレキサンドラ自身もその名前が気に入ったらしい。
俺は馬車から辺りを見渡した。仲良し馬カップルも雨宿り出来るような、少し大きめの洞穴でもあれば良いのだが。
暫く進むと林を抜けて、小高い丘が見えてきた。その丘の頂上に大きめの木が生えているのが見える。あの木の根元なら雨をしのぎながら野宿が出来るだろう。
カリューが手綱を操り木の下まで馬車を移動させると、早速野宿の準備を始めた。完璧に暗くなってからでは準備がし難くなってしまうので、のんびりはしていられない。
俺達は効率よく二つのテントを設置すると、木の根元に火を起こした。この火は暖を取るためではなく、暗闇から襲って来るモンスターを防ぐためだ。
俺はジェーンアンダーソン村で買ったソーセージを木の棒に刺し、焦げないように火の回りで焼いた。辺りに良い匂いが立ち込めてくる。
近くを探索していたカリューは小型の猪を捕まえて帰ってきた。銀星はソーセージの焼ける匂いにつられて帰ってきたようだ。カリューが素早く猪を解体して、料理担当の秋留に渡す。
「簡単に塩コショウでステーキにしようね」
秋留が鼻歌交じりで鉄製のフライパンを火で暖め始めた。可愛い。結婚したらこんな幸せなシーンを毎日見れるんだろうなぁ。
「今日は雨のせいで、あんまり進めなかったね」
ぼけ〜っとしている俺に秋留が突然話しかけてきた。
「そ、そうだな」
俺は危険な妄想を遮られて大した返事も出来なかった。
俺達は火を囲むようにして近くの大き目の石に腰を下ろしている。火の中の肉から良い匂いが漂ってくる。
「明日は晴れると良いんだけどな」
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