小説家になろう
盗賊ブレイブ@獣ウィルス蔓延中
第二章 獣

「ホー、ホー……」
 頭上でフクロウが鳴いている。
 ここは、港町ヤードへ向かう街道の途中。少し開けた場所にある古びた小屋の前。
 俺達はいつも交代で見張りをしていて、今は俺の順番だ。次はジェットに交代する事になっている。
「夜は涼しくていいなぁ〜」
 俺は大きく伸びをしながら独り呟いた。
 辺りのモンスターの気配も、全くと言って良いほどにない。
 平和って素晴らしい。
 しかし、全世界が平和であれば、俺達冒険者の存在など必要なくなってしまう。
 まぁ、そういう永遠の平和が訪れるなら、秋留と幸せな家庭を作れば良い。いや、平和な家庭を築きたい。
 俺は一人でニヤけながら、色々妄想に耽っていた。
 その時、すぐ近くで獣の気配を感じた。
「嘘だろ? さっきから近づいてくるような気配は無かったのに!」
 俺は素早くネカーとネマーを構えると、辺りを観察し始めた。
 しかし動く様な物体もなければ、先程感じた獣の気配もなくなっている。
 暫く銃を構えて寂れた小屋の周りを回ったが、何も発見する事は出来なかった。
 俺はネカーとネマーをホルスターに戻すと、余計な雑念は捨てて真面目に見張りを再開した。
 すると、先程感じたものと同じ獣の気配をすぐ後ろから感じた。
 俺は前転しながら、後方に向かって銃を構える。
 獣の姿はどこにもない。
 いるのは小屋の外でゴロ寝しているカリューとジェットだけだ。秋留は馬達と共に小屋の中で眠っている。
 大きなイビキをかいているカリューと死んだように眠っているジェット。
 そのイビキの主であるカリューから僅かだが獣の気配を感じる。
 人間の能力の限界を超えて、とうとう獣となってしまったか。
 俺はそんな筈はないと、カリューの顔を覗き込んだ。

「うぎゃあああああ!」
 寂れた建物の中で、銀星・アレキサンドラと共に眠っていた秋留が杖を持って飛び出し、カリューの隣で死人の様に眠っていたジェットが慌てて起きる。
 そして、頬まで避けた大きな口で欠伸をしながら、カリューが眼を覚ました。
「何事ですじゃ? ブレイブ殿!」
 ジェットがレイピアを構え、辺りを注意深く見渡しながら聞く。
「昼間の盗賊団?」
 秋留もジェットの隣に来て言った。
「転寝してたら恐い夢でも見たか? ブレイブ?」
 俺はカリューの顔を指差しながら口をパクパクさせている。
「ん?」
 秋留が俺の指の先を見る。暗くてカリューの顔があまり見えないようだ。
 野営には必須の焚き火から松明を持ってくると、それをカリューの顔にかざした。
「きゃああ!」
「ぬおおおお!」
 秋留とジェットがカリューを見て叫ぶ。
「ヒヒヒィ〜ン!」
「ヒヒヒヒィ〜ン!」
 一緒に様子を見ていた銀星とアレキサンドラが鳴く。
「どうしたんだ? 俺がどうかしたか?」


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