第二章 獣
「おかえりなさいませ。どうでした? サウザント・ウォーターフォール、綺麗でしたでしょう?」
デズリービューホテルの入り口では、眼鏡をかけた真面目そうな支配人が待ち構えていた。
「出迎えが派手だったな」
「ああ、売店のおばちゃんですか? あの人はサウザント・ウォーターフォールの裏の名物でして……」
尚も話続けようとする支配人を放っておいて俺達は自分達の部屋に戻っていった。
「ブレイブの部屋はそっち!」
さり気なく秋留の部屋に入ろうとしたが、見事に断られた。
俺は仕方なく自分の部屋へと戻った。部屋の時計は十六時を指している。もうそろそろ夕飯だな。
俺は今度は二丁の拳銃を装備して食事へと出掛ける事にした。装備も普段着からそれなりのものへと変えている。
外へ出ると秋留が隣に……いない。そうそう上手く行くはずもないか。俺は秋留の部屋の扉をノックした。
「今日はルームサービスで済ませるから」
寂しい返事が来た。
仕方なくカリューとジェットの部屋をノックしてみたが返事がない。二人でどこかに飲みに行ったのかもしれない。
今日も夕日が綺麗だ。
ホテルから暫く歩いた場所にある飲食街は沢山の人で賑わっている。昨日よりは人が多いようだ。
俺は灯りに群がる虫のように、一軒の焼き鳥屋の提灯に引き寄せられていった。
「らっしゃい!」
威勢の良い店屋のオヤジが言った。店内は十人程が腰を掛けられる長さのカウンターがあるだけだ。オヤジ以外の店員はいない。
「お? ブレイブじゃないか! 一緒に飲もうや!」
何てこった。
カリューやジェットと一緒に食事をするならまだしも、俺の目の前にはタイガーウォンが手招きしているのが見える。派手なアロハシャツに青っぽい短パンを履いている。治安維持協会の部屋では嫌気が差して観察をあまりしなかったが、治安維持協会にいる時もこの格好だった。
それにしても、こいつは見れば見るほど悪人面をしている。
まず眼に付くのはトゲトゲとした真っ黒な口ひげ。
そして顔を斜めに横断する真っ赤な傷跡……。
「オヤジ! 生ビール一本追加な!」
タイガーウォンが飲み物を注文した。俺は今日はビールを飲みたい気分ではないのだが、こいつはトコトン自分勝手な性格なようだ。
俺は目の前のメニューを見た。鶏つくねが美味そうだ。
「この店はな、つくねが美味いんだよ」
う……。
まるでタイガーウォンに言われて注文したようになってしまう。それならそうと、飲み物同様に俺の分まで注文してくれれば良いものを……
「はいよ! 生ビール!」
タイガーウォンがデカいジョッキを受け取ると、一気に半分程を飲みつくした。
こいつ、俺のためにビールを頼んだんじゃなかったのか!
俺は仕方なく自分でビールを頼んだ。
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