第四章 脱獄
カリューは治安維持協会傍の留置所に収容されている。
この留置所で暫く過ごした後、アステカ大陸から来る治安維持協会の船で輸送される事になる。その前にカリューを何とかしないと、自称勇者で元人間の獣人が囚人になる、というややこしい状態になってしまう。
前方から来た人が俺にぶつかって来たが、謝りもしないで走り抜けた。気付けば他にも何人かが俺達の向かう方向から走ってきているようだ。
耳を澄ますと人の叫び声や怒号が聞こえる。
「何かあったみたいだな」
俺達三人は頷くと人の流れに逆らうようにして走り始めた。何だか知らないけど嫌な予感がする。なにせカリューはトラブルメーカーだからな……。
俺の悪い予感は的中した。
小さいが頑丈そうなレンガで作られた留置所周辺で治安維持協会員達が慌しく動き回っている。
「お前は南側を探索しろ! てめぇは他の罪人が逃げないように見張ってろ!」
忙しそうに怒鳴っていたタイガーウォンが俺達の姿を見つけると、鬼のような形相で近づいてきた。
「ブレイブ、どこ行くの!」
俺の本能がこの場から離れろと告げているのに、秋留が逃げようとする俺の襟をむんずと掴んでいる。
「遅かったな、レッド・ツイスター……」
嫌味たっぷりな口調でタイガーウォンが口を開いた。タイガーウォンの口から放たれる安物の葉巻のような異臭が気持ち悪い。
「海賊一味が留置所から脱走した。獣人カリューがその逃亡を助けたようだ」
「……」
「…………」
「………………」
俺達三人は仲良く沈黙した。冷静な秋留もあまりのショックに声が出ないようだ。
「ラムズじゃなくて、カリュー?」
頭の中の整理も出来ていない状態で秋留が疑問を口にした。まぁ、ようするに脱走の実行犯はラムズじゃないのか、と言いたいようだ。
「……? ああ、あんな気弱な海賊の仕業じゃないな。騒ぎを聞きつけて俺が留置所に向かった時には先陣を切ってカリューが突っ込んで来た」
そう言ってタイガーウォンが悪趣味なアロハシャツを捲って脇腹を見せる。そこには獣に切り裂かれたように真っ赤な傷が痛々しく残っていた。
完璧な獣となったカリューを、ラムズが操っていたんだろう。
秋留の幻想術では人としての意識がなくなったカリューを操る事ができなくても、獣使いの能力があれば操れる。
「責任をもって全員捕まえて来ます」
秋留が言った。
「再度、報奨金を要求しようなんて考えてないから安心してくれ」
俺の台詞にタイガーウォンだけでなく秋留とジェットまで白い眼で見てきた。
「冗談だよ、冗談……」
冗談で言った台詞ではなかったのだが、空気が悪くなってしまったのでフォローしておく。ちなみにカリューを捕まえた時の報奨金はいくらだろうなぁ。
「奴ら、俺達をかく乱させるために散り散りになって逃げ出したようだ。
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