第一章 花の都
「もう疲れた〜」
「まだなのぉ〜?」
「つまんない〜」
クリアの不満はもう聞き飽きた。
港町を出発してまだ半日だぞ? しかも俺達がいつも乗っている馬車よりは相当乗り心地が良い。それをわずか半日で疲れたなどと……。高い金出してこの馬車を借りたジェットの事も考えてあげてくれ。
「気分転換に休憩しますかな?」
ジェットが見かねて街道を少し離れた場所に馬車を止めた。相変わらず木々が多いのだが、この場所は少し開けているようだ。
「う〜ん! やっぱりずっと同じ体勢は疲れるね〜」
クリアは思いっきり伸びをしている。
「ふふ、そうだね。私も冒険者になりたての頃は移動が辛かったなぁ……」
「お茶にしませんかな?」
ジェットが芝生の上にシートを敷いてお茶の準備をし始めた。
「いいねぇ」
秋留ものんびりする事に決めたようだ。お茶の準備を手伝い始めた。クリアも思い出したように秋留の手伝いを始める。
「良いものでございますね、旅というものは」
俺の隣でシープットがクリアを見て感動している。シープットは基本的に無表情の時が圧倒的に多いのだが、クリアを見る時は凄く幸せそうな表情をしている。まるで父親のようだ。
「シープットさんは旅をした事はあるのか?」
「呼び捨てで構いませんよ。わたくしも若い頃は色々と無茶をしたものです」
若い頃と言ってもシープットは見た目三十歳くらいに見える。真っ白の髪をしているが地毛のようだ。それともクリアの相手をしていて過労で真っ白になってしまったのだろうか?
「ブレイブ殿」
俺は軽くジェットの方へ顔を向けた。
「アステカ大陸は精霊の力が充実しているせいで、栄養価の高い果物が沢山あります」
「了解、散歩ついでに探してくるよ」
俺は荷台から『全世界サバイバル旅行記・第四巻』という分厚い本を取り出した。とある冒険家が全大陸を無銭で制覇した時の日記だが、食べられる野草や果物の情報についてもまとめられている。全十巻の長編だ。ちなみにとある冒険家とはジェットの事ではない。……ナク・ポンターホンという人物が書いた本のようだ。
「シープットも手伝ってくれ」
俺は幸せそうにクリアを眺めるシープットの背中を引っ張って行った。
「これなんかは美味そうだな」
俺は真っ赤なヒョロ長い果物を手に取ってシープットに渡す。俺が採取係り、シープットには本を参考に食べられる果物なのかを調べてもらっている。
俺は辺りを見回した。少し森の中に入ると生息している植物が全く違うものになっているのが分かる。
「……味は旨いのだが猛毒である……」
後ろでブツブツ言っているシープットは放っておいて俺は目の前の細い木を見上げた。上の方にバナナのような果物が生っているのが見える。
俺は手頃な石を掴んでバナナ風の果物に投げつけた。
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