第二章 不吉な予感
俺たちパーティーが護衛する事になったカハクのルン。
カハクとは妖精の種族の一つで、木の妖精らしい。自殺した者達の魂が木に集まってカハクになるという、悲しい生まれをもっているらしいのだが……目の前のカハクのルンにそういう暗い面は見えない。
「私は妖精として生まれ変わったの。生前の事なんて忘れて楽しく生きていこうと思って!」
楽しそうに話しているが、どこか寂しげな感じがするのは気のせいだろうか。
馬車は次の街、ヴィーンへの街道を順調に進んでいる所だ。しかし季節の移り変わりは早いらしく、日増しに寒くなっているように思える。ちなみに今日で花の都ファリを出発してから五日目になる。
「ルンはそんな格好で寒くないの?」
毛布にくるまりながらクリアが聞いた。
「う〜ん、私は寒くないんだけど、妖精族にも寒がりとかいるから……個人差とかあるんじゃないかなぁ?」
ルンは生まれてからまだ三ヶ月らしい。勿論、妖精として生まれ変わってからだが。生前は一体何歳だったのだろうか。
「信じられませんなぁ。見ているだけで寒くなりますぞ」
御者席から孫達の会話に聞き耳を立てていたジェットが言った。俺は寒さに震える死人の存在の方が何倍も信じられない。
「それにしても、次の街まで八日かぁ」
俺は一人呟いた。八日間も馬車移動が続くと思うと気が遠くなりそうだ。途中に小さな村などはあるのだが、この大人数が泊まれるような場所は無いだろう。という訳でこんな長旅をする事になってしまった。
「長いけど頑張ろうね」
「おう!」
俺の独り言が秋留にも聞こえたようだ。思わぬ励ましに自然と体中にエネルギーがみなぎる。
ルンが一時的にパーティーに加わった事で、秋留がクリアの独占から若干解放されたようだ。こうして俺の隣で仲良く会話をするのも久しぶりな気がする。
「何泣いてるの?」
「え? いや、目にゴミが入ったみたいだな……」
「ふぅ〜ん」
感動し過ぎて少しウルウルとしてしまったようだ。久しぶりに落ち着いているからなぁ……。
「そろそろ休憩しますかな?」
太陽の位置は真上に到達しようとしていた。昼前位だろうか。休憩には丁度良さそうだ。
ジェットは少し開けた広場に馬車を止めた。
早速クリアとルンが仲良く馬車から飛び出し、その後を追うようにカリューと紅蓮が続く。重い荷物を背負ったシープットも馬車を降りる。……すぐ近くで休憩するだけなんだから、荷物は馬車に置いておけば良いのに……これが執事根性というものだろうか。
「また果物が食べたいな」
クリアがボソリと言った一言が聞こえたのだろうか。執事のシープットの眼が「カッ」と開かれたと思うと森の方へと走っていった。
……キョロキョロと俺に目配せをしながら。
そうだよな、あいつ一人じゃ危険だよな。
[9]前話
[1]次 最後
現在 1/12(ページ)
[2]しおりを挿む
[3]お気に入り登録
[4]小説案内ページ
[0]目次に戻る
▼小説検索サイト
∟小説を読む
∟ラブノベ
∟NOS
小説家になろう
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/情報提供
出版社・メディア関係者様へ
公式ブログ/お問い合わせ
運営:HINAproject