小説家になろう
四精霊の伝説
第2部 つかの間の交叉
攻 防

(1)

 ピアン王国、リンツの町。
 その日の朝、キリアは宿屋の一階の食堂で遅めの朝食をとっていた。同室に泊まっているリネッタとウィンズムも一緒だった。コーヒーを飲みながらパンをかじっていると、宿屋の女将おかみがキリア宛てだと言って一通の手紙を渡してくれた。【速達、大至急、重要】と赤い太字で書かれている。差出人を見てキリアはびっくりした。差出人はエニィル――つまり、リィルの父、となっていた。リィル曰く、彼は今、ピアン王宮、つまりガルディア本拠地に捕らわれているはずなのだが……。キリアは緊張のあまり震える指で封を開けた。
 読み進めながらキリアは心臓が大きな音を立てるのを抑えることができなかった。たった二人で敵の本拠地に行ってしまったバートとリィルのことは毎日ずっと気にかけていたのだ。一人で乗用陸鳥ヴェクタに乗って後を追おうとしたくらいだった。それを実行しようとしたところ、運悪く(?)エンリッジに見つかって止められてしまったのだが。
 エンリッジは、今まで一緒に旅してきた『仲間』に、紙切れ一枚で『さようなら』なんてつもりじゃないだろ。あいつらは絶対にここに帰ってくる。キリアはここで待っていれば良いと主張した。あいつらはキリアたちのことを本当に思っているからこそ、二人だけで行ったんだと。帰ってくるのはキリア達の待っている『ここ』しかない、と。
 エンリッジの言葉に従ってここに留まってしまったことが正しかったのかどうかはずっとわからなかった。待つことしかできない日々は、長く、非常に辛かった。答えの出ない自問自答ばかりを繰り返していた。
「で、りっさんのお父さんは何て?」
 手紙を読むキリアにリネッタが尋ねてきた。
「バートとりっさんは無事お父さんに会えたってこと?」
 ウィンズムは黙々と食事を口に運んでいたが、ときどきちらちらとキリアの顔をうかがっていた。やはり気にはなるのだろう。
「うん、そうみたいだけど……。……?! ちょっと待って!」
 キリアはほとんど叫ぶように言って椅子をがたんと鳴らして立ち上がった。ウィンズムがぎょっとしたように食事の手を止めてキリアを見上げる。
 キリアは早口で叫んだ。
「ガルディアの女将軍がピアン王を暗殺するためにリンツに向かったって。今日の昼前には到着するって!」
「ええ?!」
 リネッタも叫んでいてもたってもいられないというように立ち上がった。
「……なんでそんな大事な情報を直接ピアン王に届けないんだ」
 ウィンズムがぼそりと呟く。確かに、と思いつつ手紙を読み進めて納得する。
「……そっか。私宛てに出したのは『念のため』ってことだったのね。私に届いてるってことはピアン王とサラにも届いてるってことだから一安心……かな?」
「だったら『念のため』の意味ないじゃん」

     

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