小説家になろう
四精霊の伝説
第3部 動き始めた伝説
接 触

(1)

 翌朝、キリアの体調はすっかり回復し、その日の昼過ぎには塔を旅立つことになった。キリアはキルディアスとエニィルの関係を心配していたのだが、昨晩も今朝も二人は普通に会話しているように見えた。リスティルに頼んでおいた口添えが効いたのだろうか。
 別れ際に、キルディアスはエニィルに言った。
「わかっているとは思うが……第二のクラリスにはならないで欲しい。無論、わかっているとは思うが……」
「ええ……勿論。それは、勿論です」
 エニィルは大きく頷きながら少し寂しそうに笑った。
 一人で乗用陸鳥ヴェクタに乗り込もうとするエニィルに歩み寄って、キリアは声をかけた。
「ごめんなさい、エニィルさん。祖父の言うことは気にしないで下さい」
「ううん、とんでもない」
 そう言って、エニィルはキリアに微笑んだ。
「君のおじい様には、本当に感謝しているんだ」
 そして、五人は再びヴェクタでキグリスの大草原を渡り始めた。次の目的地は北のコルシカ王国の湖畔の町、「コリンズ」だとエニィルは言った。コリンズにはエニィルの知り合いがいるらしく、大賢者の塔から伝書鳥で連絡を入れたとのことだった。
「コルシカ王国かー。北の国境越えるのは初めてね」
 ヴェクタに揺られながら、キリアは言った。
「あたしも」とサラが同意する。
「俺も」とバートも言った。
「ピアン人にとっちゃあ、コルシカって遠すぎるもんな。こんな機会でもなきゃあ行かねーよな」
「でも、俺は……」
 リィルは呟くように言った。
「なんでだろう……なんか懐かしいような感じがするんだ、コルシカって。初めて行く場所ところのはずなのに……」
「もしかして、水の扉――水の精霊の影響力の強い場所ところだから、惹かれるんじゃない?」
 キリアは言って、ふと右手首の腕輪リングを見た。左手でそっと触れてみる。
「何なんだろう、”精霊”って……」
 そんな言葉が口から出た。
「精霊は精霊でしょ」
 サラがキリアを見て言う。
「いやまあそうなんだけど」
「あたし達が普段見て触れて感じている通り、で良いんじゃないかしら。それ以上でもそれ以下でもないと思うわ」

 *

 子供達四人の乗る乗用陸鳥ヴェクタの後姿を眺めながら、エニィルは小さくため息をついていた。風の扉の件は失敗だった。キリアは衝撃で気を失い、リスティルは腕輪リングの所為で負傷してしまった。炎の扉の件は特殊なケースだと思っていたのだが……まさか風の扉でも、二人の身にあんなことが起きてしまうなんて。
 しかし、それでもキルディアスは、素性の知れない異郷の者を信用し、これからの旅にキリアを、つまり腕輪リングの持ち主を同行させることを許可してくれた。キリア自身が「行きたい」
     

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