小説家になろう
四精霊の伝説
第3部 動き始めた伝説
水 の 迷 宮 ( 下 )

(5)

「キリアちゃん……」
 エニィルはキリアのほうへ一歩一歩、ゆっくりと近付いてきた。
「リィルの言うとおりだ。君は本当にこの場から離脱したほうが良い」
「エニィルさん……」
 キリアは臆せずエニィルの瞳を見据えて言った。
「貴方なんですか? 氷の刃でリィルに攻撃してたのは」
「そうだよ」
 エニィルは無表情で言い放った。
「な、どうしてそんなこと……。何で親子で戦わなくちゃならないんですかっ」
「それはね、キリアちゃん」
 エニィルはわずかに笑みを浮かべた。
「水の大精霊”流水ルスイ”の力を手に入れられるのは、僕かリィル、どちらか一人だけだから」
「あ……」
 確かにキリアは、”流水ルスイ”の力を手に入れるのはエニィルとリィル、どちらになるのだろうとちらりと考えたことはあった。”ホノオ”の力はバートが、”風雅フウガ”の力はキリアが手に入れた。”風雅フウガ”については、おじいちゃん――大賢者キルディアスがそう指示したからだ。だから、”流水ルスイ”の力を得るのはリィルになるのではないかとキリアは何となく予想していた。
 しかし、今回の場合は、エニィルも”流水ルスイ”の力を手に入れたがっているということなのだろうか。それにしても、
「なんで親子で傷つけ合わなくちゃならないんですか!」
 キリアは叫んだ。バートとクラリスのことが頭をかすめる。父親のことを「敵だ」というバート、彼らの関係には心が痛んだ。しかし、まさかリィルとエニィルまで……。せめて彼らには……彼らが戦う姿なんて見たくない。
「そんなこと……エニィルさんとリィルで話し合いで決めれば良いじゃないですか」
「話し合ったって無駄だよ、きっとお互い譲らないから」
 エニィルが答える。え?、とキリアは背後のリィルを振り返った。
「そういうこと」
 リィルは真顔で小さくうなずいた。
「この子は言い出したらきかないし負けず嫌いだからね」
 とエニィルは言う。
「だから、実力でわからせることにしたんだ。どちらが”流水ルスイ”の力を得るにふさわしいかを」
「エニィルさん……」
「さあ、キリアちゃんは早くこの場から立ち去るんだ」
 エニィルはキリアを見て言った。
「さもないと、僕はきっと卑怯な手を使ってしまう……」
 エニィルは右手を掲げた。攻撃が来る、と思ってキリアは身構えた。周囲の空気が一気に冷えた。さっきキリアが晴らしたばかりの白い霧が再び濃くなる。
(そうか、エニィルさんは「水」を使えるんだから、この霧はエニィルさんが)
「キリア、気をつけて!」
 リィルが叫ぶ。
「!」
 左のほうから風を切って何かが飛んできた。キリアはとっさに風の精霊を召喚して放った。
「キリア!」
「こっちは大丈夫だから! リィルこそ気をつけ……」

     

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