小説家になろう
四精霊の伝説
第4部 背中合わせの幻想
帰 還

(1)

 手紙を書こう、とキリアは思った。
 そういえばリンツのユーリアたちにはリンツを旅立ってから一度も連絡を入れていなかった。もしかしたらキリアたちが知らないところでエニィルが連絡を入れていたのかもしれないが。
 西へ向かって走る乗用陸鳥ヴェクタの上で、キリアはペンを走らせる。リンツを出てからの自分たちの旅を思い出しながら、言葉にしてつづっていく。
(途中までは、順調だったのよね)
 大賢者の塔で、キリアが”風雅フウガ”を手に入れるまでは。しかし、コリンズでは”流水ルスイ”を手に入れた後エニィルが姿を消し、そして、ツバル洞窟では……
(この旅……、終わってみれば、ずいぶん多くのものを失った……。私たちの旅って、一体、何だったの……?)
 ツバル洞窟を後にしてから何度も自問した問い。キリアはため息をつく。しかし、何度ため息をついたって、何も変わらないことは十分わかっている。
「そうか、おじいちゃんとリスティルにも知らせたほうが良いよね……?」
 キリアはぽつりとつぶやいた。
「大賢者の塔に寄ってくのか?」
 バートが尋ねてくる。二人しか乗っていないヴェクタは、必要以上に大きく感じられる。
「ううん」キリアは首を振った。
「そんな時間はないと思う。バートだって一刻も早くリンツに戻りたいでしょ? だから、もう一通書いて、キグリス首都から伝書鳥で飛ばす」
「今書いてるヤツ送って、母親たちにはリンツに着いてから直接話せばいーんじゃねーか?」
「でも、早いほうが良いかなって。それに……」
「それに?」
 キリアは力なく笑う。
「だって直接話しづらいから、こうやって書いてるんじゃない」
 クラリスのこと、エニィルのこと、リィルのこと、サラのこと……。それを、ユーリアと、リィルの家族と、ピアン王に伝えなくてはならない。もちろん、自分の口からも報告するつもりでいる。この手紙は、その予行練習なのだ。それに、リンツに着いて、何も知らないユーリアたちに再会するのはこっちがつらすぎる。再会したとき、ユーリアたちが事情をわかっていてくれたほうが、ずっと良い。
「全部、こっちの勝手な事情なんだけどね……」
 キリアは呟いた。
「キリア……」
 バートはキリアの肩に手を置いた。励ますように。
「こんなことになっちまったけど……。あいつらは、リィルもサラも、絶対大丈夫だって、俺は信じてる。ガルディアは四大精霊全てを手に入れて、それで何が起こるかはわかんねーけど……。まだ、完全な手遅れじゃねーって思ってる。まだ、間に合う。今からでも、取り返しはつくって……」
 自分にも言い聞かせるように、力をこめてバートは言った。
「うん、そうね。……本当にその通りよね」
 キリアも言った。

 *

 バートの母ユーリアと、リィルの姉エルザと兄フィル、
     

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