小説家になろう
四精霊の伝説
第2部 つかの間の交叉
不 可 解 な 感 情

(1)

「お帰り、キリア」
「ただいま」
「どうだった? 会えた?」
「ううん、ダメだった」
「やっぱり……」
「きっと、伝言出してすぐ行っちゃったんだ……。よっぽど私に会いたくなかったのね」
「……止められるから、ね。止めるんでしょ?」
「当たり前よ!」
「もしくは……ついてった?」
「……かもね」
「わたしは……キリアも行っちゃったらどうしようかと思ってた」
「……そっか」
「…………」
「…………」
「……でも、さ」
「ん?」
「……最悪の事態は免れた、と思わない?」
「え?」
「最悪の事態ってのは……バートがりっさんの静止を振り切ってひとりで行っちゃうことだと思う。そしたらきっと、みんなで追いかけてたでしょ」
「……リィルが一緒なら、ある程度は心配ない、ってこと?」
「そういうこと。しっかりしてるからね、彼は」

 *

 キリアとリネッタは、取り敢えずウィンズムの部屋に泊めてもらうことになった。ベッドは二つしかなかったので、ウィンズムは毛布に包まって床で寝ている。
「アンタ怪我してるんだからベッド使ってよ。わたしが床で寝るから」
 とリネッタが主張したが、ウィンズムは譲らず、ベッドとベッドの間のテーブルの下に潜り込んで、さっさと目を閉じてしまった。
(騎士の家を出たって聞いたけど、それでも、ちゃんとレディーファーストなんだ)
 と感心しつつ、ウィンズムには悪いことしちゃったな、と思う。リンツでは医院や宿屋のベッドが足りておらず、ウィンズムは怪我人だからという理由で、優先的にこの部屋を紹介されていたのだ。
(そういや『道の駅』のときも、伯父様がヘンなこと言って、バートとリィル(と王子と伯父様とアリス君)を野宿させちゃったっけ)
 ここに伯父様がいたら、ウィンズムはこの部屋も追い出されるのかな……と思うと、キリアは少し可笑しくなった。

 *

 二人分の寝息を聞きながら、キリアは何度目かの寝返りを打つ。
 背中の下でベッドがぎぃ、と音を立てる。
(眠れない……のは、わかってたけどね)
 話し相手が自分の心だけとなると、どうしても、考えてしまう。自分を置いて首都に行ってしまったバートのこと。リィルのこと。
 そして……明日から、自分は、どうするのか。
(まずは……サラに伝えなくちゃ)
 それはものすごく、気が重いことだけど。

 リンツの長い夜は、静かに、ゆっくりと、更けていく――

(2)

 ピアン国民の消えた街。
 代わりに、帯剣した異世界の兵たちが徘徊している街。
 それでも、ここを、『ピアン首都』と呼んで、良いのだろうか――。

 *

 街外れの空き地で、バートとリィルは草むらに足を投げ出して座っていた。ある人物――首都に到着して最初に会った『異世界人』――に、「ここで待っていろ」
     

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