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“Galactic ILLUSION” (銀河幻想) The ORPAHN Ⅲ
◆Lyric 001◆招待者の名は
012  /ユーデリウスの意を継ぐ者




 思ったよりも静かな夜だ、と感じるのは反動だろう。

 いささか下品な感も否めず、先刻の泥沼のような喧騒にまみれる宴は、あまり好みではない。

 若い皇帝は“神殿”内のタワー一室で、窓辺から垣間見えるキシュトワル市の夜景を眺め、しばしの休息を独り物思いに耽っていた。

 実を言うと、クロイカントが彼女に挨拶をして去ってから間も無く、ルードニースを体調不良にさせて、それを口実に退出したのである。

 本当のところ、カロルシア自身も精神的な乱れを感じていたのだったが、デビューでいきなりの退場ときては、あらぬ噂を呼び、いらぬ足元を見られかねない。

 まして敵味方の入り乱れる外交戦の嵐、帝政のメンツを保つにはなんとしてでも『カロルシア自身の理由』は避けねばならなかったのである。

それが国家元首であり、帝政の力の象徴たる立場の者であった。

 女主人を失ったパーティーがどうなろうと正直どうでも良いが、それら腹を探る交友好きな王侯貴族や、商機を逃さぬ嗅覚のハイエナたちが、好き勝手に権勢をふるっていることだろう。

 わざわざ毒気に当たることもあるまい。

 にわか神輿に乗った若輩者が出しゃばるものでもない。

 これをボイコットと言うのか、エスケープと言うのか、ただのサボタージュであるならば問題だが、権威権力に纏わり絡みつく欲望の糸は、適当にあしらうのが良策であった。

 ―――伝説によると、いや、ほぼ伝説化しているエピソードでは、その宴にてあまりのストレスにより、強度のヒステリーを起こして会場の窓と言う窓を割った皇帝も居たそうである。

 割った、とは、当人が何か凶器になるようなものを手にして、非常に原始的な意味合いで割ったのではなく、こみ上げるマグマのようなエネルギーを制御できなかったのが事実であるらしいが、その場をどう収めたかは定かではない。

 少なくとも、その皇帝はなにやら離れ技を駆使できることや、壊れるのが窓だけで済んでいる、と言う側面が窺い知れるのだが、地獄の汚泥にも勝る腐臭と毒に耐性がつくのは、いま少し時間が必要であると言うことだ。

 
 
 
「……疲れた―――かな……」

 ついに口にした。

 続きの部屋には控えが居るほかは、静寂のみ。

 自分以外には誰も居ないことを思い出した。

 それでも何かに気兼ねしているかのように、そっと窓辺から離れて、外の光景が見えるように深くゆったりと椅子に腰掛けた。

 私人としての非常に貴重な時間であったが、その時間すらも以前のように自由であるはずもない。

 常に何かしら頭を巡らせねばならない。

 先ほどのレイゼンの微かな動揺に気付くことはなかったものの、洞察力と直感が直結した場合、尋常ではないものを察知すると認識力によって表層意識に昇るものである。



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