小説家になろう
異界の古代魔道士
王国編
第九話 沈黙。沈黙。そして…

 線香と薬品が混ざったようなにおいが鼻を突く、内装のほとんどが木製の一室。
 車酔いした直後だと絶対に吐いてしまうであろう俺にとっては、とても不愉快な空間であることは間違いない。

 その広くとも狭いともつかない部屋の中央。

 置かれた長卓を挟み、ソファに座って向かい合う俺こと神崎桐也と、この街の魔道管理局責任者、ガヌロン局長だ。
 実は俺の隣にセレス嬢がいるのだが、この部屋の異臭の強烈さに酔ってしまい、今は鼻を両手で塞いで俯いている。
 頭を下にすれば余計に酔うのではないのか、と先ほど彼女に聞いたのだが、この態勢が一番楽らだと言うので、そのままにしている。しかし俺が思うにこの部屋から出たほうが一番楽なのではないだろうか? ただ俺を王都に連れて行くまで離れるわけにはいかないと聞かない。人通りの多い街の中で俺を一時間近く待たせた者のセリフとは思えないが、その件に関しては俺のためだったので大目に見るとして………

「…………」
「…………」

 時折聞こえるセレス嬢の呻き声以外は終始無言のこの空間で、年の差六十以上のローブ人が二人、何か会話するわけでもなく沈黙している。
 
 死にたくなるほど気まず過ぎるっ……!

 いつだったか、セレス嬢と薄暗い森の中を並んで歩いていた時以上に気まずかった。

 老人はソファに掛けてからといううもの、両手を膝の上に置いたままずっと俺を凝視してくる。
 その形相は険しい以外の何者でもなく、俺の行動一つ一つに注意を払っているようだ。
 
 対する俺はというと、気まずさで逃げ出したくなる衝動を抑えるために腕を組み、貧乏揺すりが止まらない足を地面に押し付け、こちらを注目するガヌロン爺の視線をやり過ごすために、目線は少し俯きぎみになっていた。
 
 何を考えているのかまったくわからないその表情を見ているだけで、俺は目を回して卒倒しそうになる。だから目を逸らして視線が過ぎ去るのを待っているのだが、さっきよりも一層睨んでくるような気がしてならない焦燥感に駆けられ、ますますその焦りを胸中に溜め込んでしまうのだ。
 臆病者の俺にとっては、注目されることに慣れる絶好の機会だなんて考えられないこともないが、悪い意味で目立っているこの現状で、そんな無茶な試練を受け入れるほど俺は単純じゃない。
 
 一様礼儀としてフードを外してしまったのが災いした。
 これでは俺の平凡なフルフェイスを相手にさらけ出すことになり、その相手であるガヌロン爺はこの部屋に入ってから今までずっと、俺から目を逸らすことはない。不幸だ……。

 こういう時こそ、ムードメーカーたるセレス嬢に冗談の一つや二つ……いや、話題の一つぐらい振ってくれたなら、状況も今よりかなり良好になったであろうが、その当の本人は隣で瀕死状態におちいり、とても会話をできそうもない。

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