小説家になろう
ドクターズファミリー ケース1

 斉藤絵里さんの場合


 27歳で脳神経外科医の斉藤一輝と結婚した。知り合ったきっかけは合コン。私の旦那は学生時代ラグビーをしていて体格は良い。さばさばした性格だが、意外に細かい所に気がつく。
 お酒の席では、中心的存在ではないが、浮いてもおらず、時々おかしなことを言って、場を和ませる心遣いがあった。女の子のグラスが空いたらさりげなくドリンクメニューを女の子に手渡す。そして、次のお勧めカクテルをこっそり指差して何も言わず目で笑う。
 ただでさえ「医者」と言えば、女の子は興味津々なのに、彼には特に威張ったところもなく、欠点らしい欠点が見当たらず、もてないはずがない。当然、彼を狙っていた女の子は私だけではなかった。看護婦さんにもひそかに人気があったみたいだ。
 私と付き合う前に、一時期女医の卵と付き合っていたらしいけど、卒業してお互い忙しくなるとすれ違いが多くなって自然消滅したみたい。将来、女医として仕事を続けるかどうかで相当揉めたという噂を聞いたことがあるが、どこまで本当かは知らないし、あまり、聞きたいとも思わない。
 私が彼と知り合って間もない頃、私のママは、真剣な顔つきで色々と忠告した。本当は私は彼のことが気になって気になって仕方がなかったけれど、ママのアドバイスに従って、最初はあまり気のない振りをした。着ていく服、アクセサリー、化粧、すべてママと一緒に準備した。持っている服は派手なものが多いので、少し、落ち着いた服を探しに一緒に一日つぶして歩き回ったこともあった。
 2回目に友達同士数人で食事に出かけたときも、わざと斜め前の席を選んだ。彼の隣に座ったシャギーヘアの女の子は、彼への好意をあからさまにしていた。気にはなったが、あえて直視しないようにした。そして、時折感じる彼の熱い視線に、うまくいきそうな予感を感じた。

 結婚式は盛大だった。大学の教授を始め、勤務先の院長、同僚など、あまりにも多いので、花嫁側の出席者を調整するのが大変だった。みんなに羨ましがられての結婚式だった。私自身も、ちょっとした優越感に浸っていた。ママがいなければここまで漕ぎ着けることはなかっただろう。ちょっと嫌味なところもあるママだけど、感謝しなくちゃ。もちろん彼のことは好きだけれど、医師というブランドは何物にも替え難い。彼が医師でなかったなら、正直言って、結婚しようとまでは思わなかったと思う。職業だって彼の個性の一つでしょ。
 あの時、私は幸福の絶頂にいた。結婚式のアルバムの中の私は光り輝いている。私は彼のことを何も理解していなかったし、医師という職業も、医師と結婚することがどういうことかも何も知らずにいた。

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