小説家になろう
神封巫女伝
第一章(5)



  ***

 日が沈むと、あたりはだいぶ冷え込んできた。
 小屋を出て空に輝く星を見あげれば、ユニのようなまだ幼い巫女にはすでに遅い時間となっている。
 このムラで修業中の巫女たちは、離れに作られた大部屋で共同生活送っていた。帰りの遅いユニを、寮長の巫女はきっと心配しているだろう。
 声を再び声をかけて起こそうとしても、ユニは眠り続けている。
 冷えないようにと、ユニの肩に干し草をそっとかけ、アミネは寮長の小屋に向かった。扉をそっとたたくと、かっぷくのいい寮長が、わざわざ表まで出てきてくれた。二人で星空の下を歩きながら、アミネは、ユニが自分の小屋にいること、そのまま寝ていることを告げた。
「ご心配をおかけしてすみません」
「気にしない、気にしない。神殿に行ったとは聞いていたし、あの子、あんたには懐いていたからね。こっちもそんなところだろうと思っていたさ……。ところで、明日には旅立ちだって聞いたけど」
「ええ、クタガのムラへ、日の出とともに。……ユニには気づかれないように日の出前にはムラを去るつもりです」
「それはまた急だねぇ……。さみしくなるわ」
 寮長はアミネを抱きしめると、旅の安全を祈る祝詞をイアに捧げてくれた。アミネは深く頭を下げる。
「ありがとうございます。いろいろとお世話になりました」
「とんでもない。世話になってたのは、こっちの方さ。今までは『いい子にしてないと、アミネ様が帰ってこないよ』って言えば、一発だったからねえ……。あんたがもう帰ってこないとなると、きかんぼうのユニをどうやって修行にだしゃいいのか……。私しゃ頭が痛いよ、本当にね」
 深い皺のよった眼尻をぬぐうと、寮長は目をしばたたかせながら、首を振ってわざと苦笑いを浮かべてみせた。
 もともと活発なユニだから、すぐにおてんばを始めるに違いない。
 でも、もしアミネの帰りを信じて、いじらしく『いい子』を続けたとしたら……それはあまりにもやりきれなかった。
 ユニは修行を終えたら、昨日までの自分のように、やがては大王のあとに続いて、各地の森を征伐するシルメトの巫女になる。一方の自分は、明日から辺境のクタガで、一生をムラの祭祀に捧げる身だ。もう会えることはないだろう。
 明け方前には迎えの者を送るから、忙しいとは思うけれど、最後の晩ぐらい一緒にいてやってくれ、と寮長は言った。
 ユニはそのままアミネの小屋に寝かしておくことになった。

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