小説家になろう
赤狐蒼狼琴奏記
はじめてのそうじき。

「ねー」

「ん?」

俺は隣でテレビを見ている麓に話しかけた。
何もない、ただの部屋に一つだけテレビが置いてある。
なんか模様替えだとかなんとか。

「で、こっからどうするん?」

「え、もうなんかいいかなーって思って。
 うん」

「えー……」

じゃああれか。
何かしらしないのか。
今回はこれで終わりなのか。

「うーむ。
 じゃああれだ。
 一応、掃除とかしてみる?」

そういうと、麓は俺の横に何やらホースのついた機械を出した。
うねうねとしたホースが棒と何かよく分からん部分とを繋いでいる。
棒の先には箱のようなものが付いていて裏を返してみるとなんかこれまたすごい仕組みになっていた。
色とりどりのたわしのようなものがくっついている。
しかも回る。
なんだこれは。
手に取り、『強』と書いてある棒の部分のボタンを押してみる。

「うぉっ!?」

低く唸ると同時にずぞぞぞぞ、と棒の先が空気を吸い込み始めた。
これはあれか。
空気を食べる機械なのか?
掃除とか言ってたくせになんだこれは。
説明を求めるぞ、麓。

「これは掃除機。
 まぁ、読んで文字のとーり。
 分かるでしょ?」

空中にその文字を書いて俺に見せてくる。
ああ、なるほど。
つまり掃除するための機械なのね。

「じゃあ俺やる。
 なんか、簡単そうだし」

「え?
 ん。
 じゃあよろ」

「うい」

掃除機のスイッチを入れるとそれだけでずごごごごとすさまじい音が響く。
そして棒の先についているブラシのようなものが回り始めた。
これで地面をこすって汚れだけを取り出すらしい。
すごいなぁ、これ。
今のところ一番感動した。

「~♪~♪」

「あ、端っこまできちんとな。
 私は寝る」

「うーい」

麓に言われた通り端っこまできちんと掃除機を動かす。
吸ったところがきれいになるのなこれ。
簡単じゃないか。

「ふんふんふん♪」

俺は部屋全体に掃除機をすぐにかけ終えた。
さて。

「遊ぶか、こいつで」

このために今を真面目にやっていたのだ。
ここで遊ばずしてどうするのかね。
あいにく麓は寝ていることだし。

「………」

スイッチを『強』に入れてそっと手を近づけてみる。
ずぞぞぞぞ。

「うぉぉ楽しいなんだこれ」

手が吸われる感覚がめっちゃ楽しいのだ。
なんだこれすごく楽しい。

「うははは」

テンションが上がってしまいには足とか、おなかとかも吸わせてみた。
こうやっていると自分だけでなくほかの人も体験してほしくなるわけで。
そんなわけで俺は麓にそっと忍び寄った。
ぐーぐーと寝息を立てて眠っている。
すかさず掃除機のスイッチを『強』に入れ、麓のほっぺたに押し付けた。

「っな、何!?」

掃除機に頬を吸われながら飛び起きると麓は状況が把握できていないのか少し焦っているようだ。

     

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