小説家になろう
赤狐蒼狼琴奏記
はじめてのまよねーず。

「ねー麓、麓」

「んあ?」

「これ何?」

毎度のこと寝転んでテレビを見ている麓に俺は話しかけた。
俺が手に持っているのはなにやらプラスチックの入れ物に入ったぐにょぐにょするもの。
ひんやりする箱の中に入っていたものだ。

「あーそれか。
 それはマオネーザ?みたいな名前のやつ。
 マヨネーズだっけ?」

首を傾げ俺の方を見てくる麓。
いや、知らんから聞いてるんだけど。
何だって、ま、まよ?

「マヨネーズ」

「ふむ」

俺は蓋をこじ開けるとぐにっとひねってみた。
何かが起きると思ったわけじゃない。
ただ、思いついたからやってみたのだ。
そうすると面白いことが発生した。

「うぉ!?」

なんと、中身の白いやつがにゅるるんと飛び出したのだ。
そして、それが眠っている麓の髪の毛にべっったりと付着する。
もう一度いうぞ。
狙ってやってるわけじゃないんだ。

「……あのさ。
 毎回毎回、私にそうやってちょっかいかけてくるけどさ」

「ごめんなさい」

怒り心頭の麓に逆らう気力なんてない。
土下座する。
当然のように土下座する。

「……今回だけは許す。
 仔犬が、私に逆らうなんて三百年早いってことよく分かってるじゃない」

はい。
あなた様には逆らいません。
もう、俺は学んだのだ。
まさかこうなるとは思わなかった物がなぜかこうなるんだ。
わざとじゃないんだ、なぜかこうなるんだよ。
狙ってないんだ、本当に。

「ったくもう……」

麓は呪術で自分の体を綺麗にするとまた寝転がりテレビを見始めた。
ずっとこうやって麓はテレビばかり見てるけど……。
俺だってテレビ見たい。
そしてごろごろして過ごしたい。
おい、働け。
なんて口に出して言えたらいいんだけどチキンだから言えるわけがない。
死んでしまいます、俺は。

「ごはん作って―」

「ういっす」

だからこうやっておとなしく従うしかないのだ。
悔しいけど弱肉強食主従関係なのだ。
一度でいいから本気で逆らってみたい。
願望がむくむくとだな。

「おーいけいけ!」

と、思いながら麓がテレビを見てあげる完成を聞く。
どうやらサッカー?みたいなやつがやっているらしい。
ルールはよく分からないが麓は何かとこういうものが好きだ。
結構見てる。
なんだかんだで俺も熱くなれるから好きだ。

「今どっち勝ってる?」

俺は麓に話しかけて料理を続ける。
本に従ってお肉を鉄板に乗せる。
冷蔵庫から新しいマヨネーズを取り出して肉にかけようと構えた。

「おー!!
 行けぇぇ!!」

我慢できなくて麓の側まで移動してテレビを見る。
お互い同じ得点で、俺達が応援している方が敵の籠に近づいていた。

「いけぇぇえ!!」

俺も思わず熱が入る。

「いっけー!」

「いけぇぇぇ!!」


     

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