小説家になろう
赤狐蒼狼琴奏記
はじめてのりょこう その2

前回のあらすじ。
なんだかんだで旅行に行くことになった二人、いや二匹。
お互い人間の世界に行くのは初めてということで。
やれやれ、何が起こるのやら。



「りょこうってやつはどうやって行くんだ?」

気になるよな、やっぱり。
何をするのかとかも気になるし。
その辺は麓と歩きながら話そうと思うけども。
どうなんじゃろな、実際。

「んに。
 せやなぁ、適当に電車にでも乗ってみる?」

「でんしゃ?」

「うん」

がさがさと山を歩いて降りていく。
ここは麓、お前の呪術使えばいいんじゃないのか。
どうなんだ、そこんところ。

「めんど」

「Oh」

俺の願いは一瞬にして麓に叩ききられた。
少しでも楽をしたいんだがダメでしょうか。

「ダメ。
 家から出た瞬間からが旅行だよ?
 そんなんでどうするんよ」

「はぁ」

「じゃけん、歩くよ。
 いい?」

もう、好きにしてください。
何言っても俺の意見は通らんみたいだし。
でもさ。
家を出てからが旅行ってことはだぞ。

「もう今これ、りょこう?」

「んに。
 旅行だよ」

そうか、これが旅行か……!
森を歩いてるのと何にも変わらないじゃねぇか!

「なんか、あるくのめんどになったから呪術使うわ」

五分ぐらい歩くと、麓がそう言ってぶつぶつと呪文を唱え始めた。
初めからしておいてくれよ。

「ほら、いろいろな都合があってだな。
 次どうするのか話が思いつかないとか」

メタ発言すんな、バカ。

「まーいいけどさ。
 ほい、酔うよ、目瞑りなさいな」

「ん」

ぎゅっと目を瞑ると体が引き込まれる感じがして次の瞬間、山の土とは違う、固い地面に足を突いた。
すぐに耳の中をかきまわす勢いで響く大量の音が聞こえはじめ咳き込みそうになるほど匂いのキツイ空気が全身を包む。
吐き気がこみ上げてきたおかげで涙目になった瞳にグレーや黒の空まで伸びる四角の物が目に入る。
これはテレビで見たことあるぞ。
確か、ビルとかいうやつだよな。

「ごほっごほっ」

咳を出して、吐き気を逃がそうとするもこみ上げてくる吐き気は止どめなく溢れ出す。
勘弁してくれよもう。
地面についた膝を引き剥がしふらふらしながら立ち上がる。

「おい、大丈夫か?」

揺れる視界を手で押さえ、頭をしっかりと首に据える。
ここはなんだ。
地獄か。

「やっぱりお前にはまだ早かったか……。
 ウルバル、ここは『街』って言うんだ。
 テレビでも見たことがあるだろう?」

何とか騒音と匂いに慣れ、吐き気を抑え込んだ俺は周りを見渡した。

「これが?」

鼻を手で押さえ、うぐぐと喉を鳴らす。
そばを車とかいうやつが走り、建物の中に人が出たり入ったりしてる。
何が面白いのかさっぱり分からん。
空まで青かったはずの街には霞がかかって、何か不安になる。

     

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