小説家になろう
赤狐蒼狼琴奏記
はじめてのりょこう その3

「そんじゃあ、とりあえず私は適当にどこか行くから。
 お前はお前で好きに行動しんさい」

はぁ。
うん、はい。

「ほんじゃー」

とあるホテルの中で麓は俺に地図を渡すとくるんと一周回って消えて行った。
俺は呪術なんて使えないから仕方なしに外に出て歩き回ることにする。
何か面白そうなところはないだろうか。
しばらく歩いているとなんだか賑やかな場所があったからそこに足を踏み入れてみた。
懐に入ったお金を確認していくらあるのかを計算しておく。
大体一万ぐらいあるのか。
じゃあ、結構たくさん買えるなあ。
麓がいないから少し不安だが、これも勉強の一つ。
山にいたころにはこんな人間ばかりのところに来るなんて思いもしなかったから……。
少し物珍しい気もあって奥へ奥へと進んでいく。

「おう、兄さん。
 安いよ?
 買っていかない?」

「?」

きょろきょろとたくさんの人間の間をくぐってのほほんのんびりと進んでいると何やらお店のおじさんに声を掛けられた。
よりによって俺か。

「んー」

何かいいのあるのだろうか。
気になるから寄ってみる。
ドアを開けて中を見ると血の匂いが鼻を突いた。

「らっしゃい。
 なんだ、兄さんお肉食べたいって顔してるねぇ」

そりゃそうだろう。
俺は狼なんだから。
透明の入れ物にずらっと並んだお肉が俺を誘ってる。
そういえば朝ごはん食べてなかった。

「おばさん、お肉ください。
 たくさん。
 お勧めのやつを」

片言だけどおそるおそるお肉を注文してみる。
おばさんは「あいよー」と言ってお肉を紙みたいなやつに包んでくれる。

「お兄さん、かわいいからちょっとサービスしちゃった。
 千二百円ね、はい、毎度あり。
 おつりはこの袋の中に入れておいたからね。
 また来てな、はいじゃあねー」

言われたままにお肉買ってしまったが……。
ちらっと紙に包まれたお肉を見つめる。
おいしそうである。
今日の朝ごはんはこれにするとしよう。
人が賑やかだったところから少しそれて裏道みたいなところに入る。
前から来る人も誰もいない場所で俺は腰をおろした。
太陽は斜めに差し込みまだ朝の空気がひんやりと冷たい。

「んむ……」

紙の中から肉を取るとぱくっと一口かじりついた。
ぐしゅっと血が出てきて滴る肉汁がおいしい。
やっぱり肉は生に限る。

「ん?
 お兄ちゃん変なの。
 お肉は生で食べるもんじゃないんだよー?」

もしゃもしゃとお肉をほおばっていると後ろから話しかけられた。
振り返るとまだ五歳、六歳ぐらいの女の子だろうか。
女の子が俺の食事の様子を見て不思議そうに首をかしげていた。

「ん、そうか。
 いいんだよ、俺は。
 人間だから」

なんだかめんどくさそうだな、この子供。
構わないようにしてさっさと逃げよう。

「お兄ちゃんはどこから来たの?」


     

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