小説家になろう
赤狐蒼狼琴奏記
はじめてのりょこう その4

「お兄ちゃん、どうしてこんなところにいるの?」

「成り行き」

「変なの。
 お兄ちゃんは、どうして目の色が違うの?」

「成り行き……だな」

「変なのーっ。
 お兄ちゃんはどうして――」

次々と矢のように質問を飛ばしてくる子供。
俺はそれを適当に流している。
何か大切なものを見つけろという麓の言うこと。
それがいまだに理解できない。
何か大切なものって……何があるだろう。
それを考えたいのに隣の子供がうるさい。
噛むぞ。

「お兄ちゃんは――」

「お兄ちゃんは――」

ったくも。
そっぽを向いて無視していたがある一言で背中がぞくっとした。

「お兄ちゃんはどうして獣なのに人間の姿をしているの?」

思わずがたっと立ち上がってしまった。
足に乗せていた肉がぼとりと道路に落ちる。
落ち着けウルバル。
落ち着くんだ。

「……なんで獣だと思うんだい?」

冷静に聞き返す。

「うーん。
 なんか、お兄ちゃんからは獣の匂いがする。
 うちの犬とおんなじ匂い」

犬と……。
若干ショックを隠しつつ

「そうか。
 それは俺も犬を飼っているからきっとそのせいだろう。
 匂いがうつったんだな。
 っと、まぁそろそろ俺は帰るぞ。
 お前は――」

地面に落とした肉を拾いビニール袋の中に詰め込みなおす。
ぐちゃぐちゃになってしまったがまだ食えるだろう。

「あれ?」

俺が肉を拾い、子供の方を見るともうそこには誰もいなかった。
代わりに子供の微かな匂いが風に流されて消えて行った。

      ※

次の日、俺はまた昨日の肉屋で肉を買い昨日の丘にて弁当にしていた。
昨日の俺はよっぽど変な顔をしていたらしい。
部屋にて麓に

「変な顔してるぞ?
 大丈夫か?」

って言われたぐらいだからな。
何やら心配してくれてるのはいいけどまだ頼るには早いだろう。
俺は麓には「何も……」とだけ言って布団にもぐりこんだのを覚えている。
生肉をむさぼっているとふっと昨日の子供の匂いを感じた。

「こんにちは、お兄ちゃん。
 また生肉食べてるの?」

「……うむ」

女の子らしい服装をして、女の子らしい髪でにこっと笑う。
正直かわいい。

「変なのー。
 変なお兄ちゃん」

「そんなに変か、俺は」

あまりにも変なの変なの言われるから気になってきた。
そんなに変かい、俺は。
普通に人間に紛れ込めてるとおもうんだけどなあ。

「変」

「……どこが」

「全部」

いきなり全部ってひっくるめてきたよこのクソガキ。
なんだよ全部って。
どうすればいいんだよ。
何、何?
え?
もう、あれかい?
苛めかい?

「お話にならない……」

俺はぼそっと呟くと立ち上がって空を見た。
綺麗な青空が広がっている。

「でも、お兄さんはすっごいやさしい匂いがする。
 私は好き」

「……やさしい匂い?」


     

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