小説家になろう
赤狐蒼狼琴奏記
はじめてのてぶくろ。

「うーいっす」

「おはざまーす」

俺は朝起きて隣の布団で眠っている麓にあいさつした。
時を同じくして目を覚ました麓も俺に挨拶を返してくる。

「ねっむ……」

急に起きるのが億劫になり布団にもたれこむ。
この柔らかい感覚が素晴らしいのだよ。

「ウルバル起きんしゃい。
 朝の家事するぞー」

家事……か。
っていっても俺は飯作るだけなんだけどな。
そういって俺は眠気を引きずりながら居間へ向かった。
そこでぱたりと足を止める。

「……?」

机の上に今まで見たことがないものが置いてあった。
俺はそれを手に取りいじってみる。
何やら手の形になっている布のようなものだった。
手といってもほら。
あれだぞ、人間の方の手だぞ。

「これ、何だろう。
 人間の脱皮?」

俺は手の形をした布を手に取るとひらひらと振った。
すごい気になる。
なにこれ。
そのまま麓のところへ持っていく。

「麓、なにこれ」

「っ、こ、これどこにあった!?」

「へ?
 机の上に……」

俺が例のものを麓に見せると麓は顔色を変えた。
俺の手元から奪い取るとあわてて後ろに隠してしまう。

「なんだよ。
 気になるだろうがー」

「気にならなくていいけん!
 ほら、家事しんさい!」

「えー……」

気になるんだよなぁ。
なんだろう。
狼の姿になって麓の後ろに回り込もうと四苦八苦する。
だが麓も麓で狐の姿になって防御するもんだから結果的に奪うことは出来なかった。

「なんだよ、ちぇー」

俺は唇を尖らせると台所へと戻っていった。
それにしても最近一気に寒くなってきたな。
俺は窓の外を見上げた。
霜が葉っぱについて白く光っている。
あれ喉乾いた時にはよく世話になったんだよな。

「つめたっ……」

俺は皿を洗うために出した水に触れると手を反射で引っ込めた。
冷たい。
それを我慢してご飯を洗って、おかずを作る。
ほかほかのごはんが出来るのと反対に俺の手は冷たく冷えていた。
でもこれも毎日のこと。
あまり気にしない。
たまーに手が冷たさで切れたりしてるけどこれも気にしない。
舐めておけば治るから。

「麓―できたよー!」

俺は出来たてのご飯を食卓に運ぶと麓を呼んだ。





     ※





「おはよう」

「おはよーす」

いつもの通りまた朝が始まる。
俺は麓が起きたのを確認すると布団をたたんだ。
台所へ行くために立ち上がった俺をくいっと麓が服を摘まんで引き留める。

「?」

「これ、使って?
 毎朝冷たいのは苦手じゃろうって思ってつくったけん……」

「これって昨日の……」

「ん、ほんとはプレゼントって驚かせたかったけど……。
 昨日見つかったから……」

麓はそういうと俺の手に昨日のやつを握らせた。

「手袋って名前なんよ、それ。
 私が全部作ったけん、品質は保証する」


     

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