小説家になろう
赤狐蒼狼琴奏記
はじめてのおきゃくさん。

「おいっすーですます」

「おいっす……ってなんでお前がおるんじゃ!」

ある日。
そんな騒ぎを耳にして俺は布団から起き上がった。
麓が誰かと騒ぎ合っている。
そして声には聞き覚えがあった。
秋生だ。

「あ、こんにちは」

「あら、こんにちは」

俺が部屋から目をこすりながら出てきたのを見事に秋生さんに見つかった。
挨拶をしてきたから、挨拶を返す。

「じゃないけん!
 なんでおるんよあんたがー!!」

なんでって……あー。
一週間前、俺は麓に洗濯機を送った。
その洗濯機のお礼に俺のごはんが食べたいとか言ってたんだよな。
それで来たと、なるほど。

「おいっす、おいっす」

「うーがるるる……」

唸る麓をものともせず秋生は俺に手を振る。
俺も手を振りかえして頭をぽりぽりと掻いた。

「まったく、いいじゃないの少しぐらい。
 遊びに来ただけよ?
 べーつにあんたの仔犬を取りに来たわけじゃないのよ?」

のんびりと秋生はそういうと家の中にどかどかと入って来た。
この人もこの人で結構遠慮しないタイプなんだな。

「とりあえず私はお客様よっ?
 ほら、お茶淹れてよお茶。
 のみたいわ」

「うーうー……ウルバル……お茶を……」

「あら、淹れてくれるの?」

はぁ、まぁ……。
すっかり茶の間に入り浸って、ずっとここに住んでいたような感じの秋生さんは俺の目をじっと見てきた。
淹れてくださるの?といった表情に頷く以外の選択肢が消される。

「でも、もう少しで晩御飯ですし。
 そろそろ俺はご飯作りますから……」

「あら?
 もうそんな時間?」

そうなんですよ。
俺は昼寝から覚めたばっかりなんですよ。
時計見たらもう夕方の五時ですもの。
そろそろご飯作りますよおいらは。
というかあんたも狙ってこの時間に来たんじゃないんですか。

「あらあら。
 じゃあごはんもらおうかしら」

「ガルルルルルル……」

麓も少し落ち着けよ。
お前狐だろ、そもそも。
がるるるるはおかしいんじゃないか。

「いいの!!」

「お、おおうっふ。
 ごめんて、落ち着け」

まったく、何かあるとすぐにこれだもんの。
やれやれである。
そんなに秋生さんのこと嫌わなくてもいいだろうに。
いい人じゃん。

「そもそもあんたなんできたんじゃ?
 私はよんじょらんよ?」

「あら?
 あなたに呼ばれなくてもそこにいる狼君に呼ばれたのよ?」

「んだって!?」

麓はそういうと俺をきっと睨みつけてきた。
なんなんですか、もう。
洗濯機をもらう時にですね。
ご飯食べさせてあげるって約束したんですよ。
それなんですよ、それ。





          ※





「おいしかったー!」

「食べたなら早く帰りんしゃい」

麓はむっつりとした表情で秋生をせかす。
秋生は「そうね」
     

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