小説家になろう
赤狐蒼狼琴奏記
はじめてのしーでー。

「こんなものを人間界から手に入れてみた」

「?」

麓はそういうと俺に丸いものを見せてきた。
なんというか……すごい光っている。
天井からつり下がった伝統の光を照り返して何とも不思議だ。

「なんこれ」

俺は麓が手に持っている丸いものを触ろうと手を伸ばす。

「後ろ触ったいけんいわれたけん、触らんでや」

「えう?
 後ろってどこやねんな」

「このきらきらするところ!」

全般やん!
このきらきらするところって、光跳ね返してるところやん!
確かに言われてみれば麓は真ん中に開いた穴に指を入れて持っていた。
そういう風に持つなんて変わっているものだと思う。

「ほんで、これなんなんよ?」

正体不明の時間が少し長すぎる。
麓は髪の毛を残った手でいじり前髪を整えると

「しーでー?とかいうやつ」

「しーでー?」

なんじゃそら。
しーでー?
しーーでーー?

「うまい?」

「食えるもんじゃないみたい」

なんだ。
食えないのか。
すっごい残念。
確かに食べたら腹壊し層な色してるもんな。

「ほんで、何に使うん?」

「聞いてきたところでいい?」

俺は頷く。
それ以外に思いつかないんだろ。

「なんか、音楽菊とか言ってた」

「なに、これから音楽が鳴るの?」

「知らんけん」

えー。
聞いて帰ってこいよそこはよー。
分からないなら聞きなさいよ。
それは麓のプライドが許さないのだろう、たぶん。
聞いて来れば楽なのにな……。

「知らんって、あんたどーするのよ」

「……一緒に考えてや」

「はあ……」

仕方ない一緒に考えるとする。
秋生さんに聞けば一発かもしれないけど麓が拗ねるから呼ばない。
丸い形をしているってことはどこかに差し込むのかしら。
それに薄い。
ということはだ。
簡単に考えてもこれは転がらない。

「転がしてもならない……と」

俺がそう結論を出した横で麓がしーでーをほいっと転がした。
何ころがしてんねん。
すぐにしーでーはぱたんと倒れてしまう。

「振ってみるとかは?」

「んー」

麓はしーでーをつまんでひらひらさせる。
音楽は、ならない。

「……水につけてみる?」

「ウルバル、面白発想や」

麓はそういうと桶に入った水の中にしーでーを漬け込んだ。
音楽はならない。

「えー……。
 もうどうしようもなくね。
 ならんやん、こんなん無理やん」

「ほやね。
 じゃけん、私は諦める」

悪い方向に行きやがったよ。
俺もわけわからんしな。
ゴミ箱へぽい、か。
ずっと前のたぶれっととかみたいだな。
人間はいったいこんなもんで何が面白いのやら、ということだ。
わからんね。
生物としての考え方が根本から違うんだろうなぁ。
おそらく。





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