小説家になろう
赤狐蒼狼琴奏記
はじめてのだんべる。

「おおー……!」

「これ、すごいなぁ」

俺と麓はそういって、テレビにかじり付く。
テレビでは肉体が自慢の人達がでており、その肉体を披露していた。
中でもすごかったのは十二番の人で

「おお!?」

胸の筋肉をピクピクと動かしていた。
まるで別の生き物がそこにいるみたいだ。
なんかよーわからんが麓はそういうのが好きらしい。
意味分からん。
人間のなんというか、肉体美とかいうやつか。
それに引かれるらしい。
わけわからん。

「はー」

まー俺からしたら若干不機嫌である。
面白くない。

「でもこれぐらいにムキムキになられるとやだ」

麓は次の番号の人には辛辣な評価を投げた。
どうやらほどほどがいいらしい。
細マッチョとかいうやつだ。
俺は自分の毛むくじゃらの足を眺めてみた。
狼として生まれたにも関わらずここ最近は山一つ超えていない。
運動能力は落ちているだろう。
それは足のラインで表れる。
少し ぽにょっとしてた。
狼の姿でこれだから人間の姿になったらと思うとぞっとする。
これは少し鍛えねばならぬ。

「ちょっといってくる」

「ほへ?
 どこへ?」

麓の問には答えず俺は玄関から外へと飛び出した。





「ただいま」

俺は自分の体力の衰えに唖然とした。
昔と比べて各段に落ちている。
山を一周しただけなのにこの息のあがりようだ。
まずいぜよ。

「なにしてきたん」

麓はお煎餅をかじりながら聞いてきた。
うるせーばか。

「鍛えたいんならダンベルとか使えばいいんよ」

俺の心を読んだのだろう。
そういうと麓は呪文を唱え、なにかを俺の前に置いた。
だんべるとかいってたけどもどう使うのこれ。

「どう使うって、こうな、持つやん?
 ほんで、こうぐわっと、いけばいいんよ」 

麓はだんべるを持とうとして腕がプルプルしていた。
当然持てていない。
だめやん。 

「まーこんな感じでやって行けばウルバルも持てるようになるし。
 なによりあのむきむきに近づくことできるようになるけん。
 ちょっとがんばってみたら?」

ふむ。
ちょっとがんばってみるか……。

「あ、その前にあんた人間にならんでどうするの。
 その獣の恰好じゃどうしようもないでしょうに」

あー。
そっか。
俺は人間の姿になると改めて鏡の前に立ってみた。

「ちょ、ちょっと待って。
 ウルバル、ストップ。
 あんたやっぱりそれ維持してくれん?」

「ほへ?」

なんだ。
よー分からんけど胸ぴくぴくせんけど。
これでいいのか。

「うん、それでいい。
 それでいい、それで」

ふーん……?
なんやよう分からんけどいいのか……。
ふーん……。
おう。
おう?
……おう?





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