小説家になろう
赤狐蒼狼琴奏記
はじめてのせんざい。

「ごちそうさま」

俺は食料を詰め込んだおなかをポンポンと叩いた。
非常に美味でござった。

「はいはい。
 皿洗いやっとけよ」

「ういういさ」

麓はうーんと伸びをして食卓から立ち上がりテレビをつけた。
人間たちが中に入って楽しく騒いでいる機械だ。
俺も見たいところだったが役目が残っている。
俺は今食べたばかりの食器をまとめて台所へと持っていく。
食事を作るのは麓。
洗うのは俺。
明文化された役割で今現在うまいことやっている。
いくら神の力で死なないとはいえおなかは減るもの。
食べないと元気が出ないのだ。
人間の姿のまま、台所へと食器を持ってゆき、蛇口をひねる。
だいぶ人間の生活にも慣れてきた。
まだまだ知らないことも多いけどね。

「つめた」

水で早いうちに汚れを落とさなければこびりつく。
そうすると洗い流すのが面倒になるのだ。
麓にそう叩き込まれた。

「ん……。
 うー冷たい」

いくら季節が季節とはいえ冷たい水は慣れない。
生まれてしばらくしたとき川に落ちた記憶が蘇る。
あれは怖かったなぁ。

「あー、そうだ、ウルバル。
 新しく今日から潜在つけといたからそれつかえ」

潜在?
初めて聞く名称だった。

「潜在……ねぇ」

なんだそれは。
気になる。

「あー、面倒だから口で説明する。
 よーく聞いてよ」

はい。
よく聞かせていただきます。
水を止めて麓の方を見る。

「えっとねぇ、台所の流し台あるでしょ?」

あっと、ええ。
流し台っていうのはこの金属部分のことですよね?
いまさらですが。

「うん、それ。
 スポンジ……分かる?」

「分からない!」

元気よく返事を返した。
分からないです。

「はぁ……もー」

ごめんなさい。
面倒そうに麓は立ち上がってのろのろと俺の横に立った。

「これ。
 このもにもにしたやつ」

麓はスポンジとかいうものをつまんで俺の鼻先に突き付けてくる。
お、おう。
分かったからやめてください。
鼻がスポンジに埋まっています。

「使い方はこのスポンジにこの洗剤を……」

ドロドロとした液体が入った入れ物を麓は手に取った。
先端の白いところを引っ張りスポンジへと中身の液体を振りかける。

「こうやって振りかけるだけ。
 何回かにぎにぎすると泡が立つ。
 で、これでごしごしこするだけ。
 今迄みたいに水でずっと流しておくことないからね。
 あ、でも洗ったらきちんと水で流すようにすること。
 泡が全部とれるまでね」

ふむふむ、了解です。

「じゃあ、私あっちで寝てるから。
 がんばってね」

ういっす。
麓は手を洗って泡を流すとふらふらとあっちへと消えて行った。
早速教えられた通りにやってみるとしよう。

「えっと……。
 スポンジに潜在を掛けるんだっけな」


     

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