小説家になろう
赤狐蒼狼琴奏記
はじめてのせんぷうき。

「あつい……」

「な」

みんみんと蝉が元気に唸っている。
太陽が上から熱を振りまくおかげで気温はうなぎのぼりと言えた。
俺はぐったりとして麓に話しかける。
麓は麓でぐったりして、頭の上でいつも元気に立っている狐耳はぐったりとしていた。
天狐もぐったりするんだなぁとどうでもいい発見をしてしまう。

「暑い……。
 麓、暑いじゃない、熱い」

俺はうなるとゴロゴロと床の場所を移動した。
冷たい木の床を順々に移動する。
一か所に集まっているとすぐに温くなってしまうのだ。
温くなると温くなるとでうっとおしい。
自分の体温が憎い。

「私も暑いわ。
 溶ける、本当に」

「なー。
 熱い死ぬ」

「面倒だけど呪術使う……。
 でなきゃ死ぬ」

麓はのそりと両腕を上げるとくるくると回し始めた。
この糞暑いのに 何をやっているのやら。
呪術で涼しくなるものなのか、と。
あほらし。

「いでよ、扇風機」

麓がそういうと同時に空中からひとつの機械がどんと落ちてきた。
なんか中にぐるぐるするものが付いており、その周りを金属の網が囲んでいる。
スイッチとかいうやつは四つついていてそれぞれ強さや時間を示しているみたいだった。
だいぶ人間の道具にもなれたなぁ。

「ん。
 おい、これ刺せ」

「はあ」

麓が扇風機とかいうやつから伸びているコードを俺に渡してくる。
たしかこれはコンセントとかいったっけ?
上半身を起こしてコードを手に這うようにして壁に向かった。
狼の姿でいてもよかったのだが、狼の姿だと毛がうっとおしい。
それに比べ人間だと毛が少なくて、その分涼しく過ごせると言えた。
自分でさせよこれぐらい……。
愚痴りながらも

「刺したよー」

俺は麓に合図を送る。

「ん」

あいからわずの返事が返ってきてぴっ、と音がした。

「お?」

ゆっくりと扇風機の中身が回り始める。
いったい何が起こるんだ……?

「あー」

回るとほぼ同時に麓の長い髪の毛がはためき始めた。
まるでそこに風が吹いているかのように。

「な、え?」

俺も扇風機の前に行って風があるのかどうかを確かめようとする。
すると麓は足で扇風機を動かし

「ダメ。
 これ私のだから」

と、独り占めし始めた。
ずるい。

「俺にも、俺にも」

「はぁ?
 嫌よ」

「…………」

睨む。
俺だって欲しい。

「出すのたぎぃ(だるい)」

じー。
くれ。

「あーもーはいはい。
 やれやれ、新しいの出すから」

          ※

そんなわけで新しいのをもらった。
早速コンセントにプラグを差し込みスイッチを押してみる。

「お」

中に入っているものがゆっくりと回り始めそれと同時に風が俺の顔を吹きつけた。
涼しい。

「ふー」

うちわであおぐよりも多い風がそよそよと顔を吹きつけてくる、

「おあーあー」

     

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